【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
提示された十日という短い時間を里佳子と燭にも伝えると、二人も内部にある事情を察して、父の気持ちも察して黙り込んでしまった。


たった十日の短い時間、私達は共にいても殆ど会話を出来ず、各々深く黙り込むばかり。


私達のその空気と、ルイのいない現状にクラスメイト達も何も聞けずにチラチラと様子を窺うばかり。


彼らに非は無い。彼らは無知だ。けれど、無知である事はある意味、私達にとっては罪なのだという事も、彼らは今後も知るよしも無い。


心が、バラバラになっているのを近くにいればいる程痛く感じる。


運命共同体の筈の私達は、その運命の先にある無数の色をバラバラに見ていて、九日経った今でも同じ方向には向いていないのだ。


このままでは、納得行かないまま、大きな世界の大きな渦にまかれて溺れて行くだけだろう。


その溺れた先には、おそらく、小さな幸せすら感じられない場所があるに違いない。そう思うのに、足掻く力さえ無くなり、心が麻痺して行く。ルイが、命懸けで取り戻してくれた大切な心が。
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