【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
夜、意識が飛ぶような感覚で眠りに落ちて、私は久々に夢を見た。
そこは柔らかな光が降り注ぐ場所だった。制服を着た私は、道無きその空間をひたすらに進んでいる。
歩き続けて行くと、顔の大きさくらいの淡い紫色の粒が、光を吸い込みクリスタルのように輝き、うようよと空間に浮き始めた。
そっと、その宝物のような美しいものに触れると、温もりを帯びた柔らかな粒が弾けて、小さくなってまたうようよと空間を泳ぐ。
嗚呼、ルイが泣いている。何故だかそう思った。何故泣いているのかな。どんな涙なのかな。彼の心が知りたい。
そう思いながらも歩くと、目線の先に、焦がれた彼の細いラインの背中が見えた。
歩みが、早くなる。どんどん、どんどん。
気付いたら足をもつれさせる程に走って、走って、彼の温もりを求めて進んでいた。
ルイ、ルイがいる。傍にいたい。傍にいて。だって、私達はそういう約束じゃないか。
願うのに、ルイの背中には一ミリも届かない。叫ぼうにも声が出ない。
「馬鹿だなぁ、エミリは」
近付かない、いくらたっても触れられない。なのに、傍にいるかのような距離でルイの鳥の囀りのような、美しいハイトーンボイスが耳に届いた。