【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「ねぇエミリ。ボクはたった一人の存在になれたかな?小さなおもちゃのロボットでもなく、高性能のヒューマノイドロボットでもなく」


なれたよ、なっていたよ。いつの間にか、私にとっても、成にも、里佳子にも、燭にとってもルイはたった一人、唯一の存在だ。


「そう思ってくれているのなら、キミになら、ボクがどうして欲しいか分かる筈だよ。迷う理由なんてあるのかい?」


自分の存在とずっと独りで戦って来たルイが、私達に下して欲しい決断なんて、もう分かっているよ。本当は、ずっと。


だけど、感情があるからこそ、それを簡単に決断出来ない。感情を持つというのは、強い事であり、とても弱い事だから。


「そうだね。……それでも、ボクが望む事は一つだよ。我儘かな?でも、ボクはボクという一つの存在だけで、キミの全てでいたいんだ。ダメかな?」


ルイはどこまでも穏やかに、まるでこの空間の全てのように穏やかに、私に語らう。


君の我儘があまりにもヘビー過ぎて、頭がおかしくなりそうだ。でも、私や皆が望む答えは、君が望んだ事を叶えてあげる事、なんだよね?


大切な事に気付かなかった。私達の気持ちの問題じゃなくて、最優先はルイがどうしたと思っているかという事を。


夢だけど、きっと夢じゃない。もしかしたら私に全てを返す時に私に残した忘れ形見の声、なのかな。


「決まったみたいだね。……じゃあ、ボクは行くよ」


見えていた背中が光に滲む。ああもう、ルイと会えるのは最後なのかな、と思い、悲しさと同時に愛しさがこみ上げた。
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