【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
目が覚めたのは、まだ空が薄紫色の朝だった。


ルイが泣いている色の空だ。結局、何故泣いているのか聞けず終いだったけれど、泣いている色が嫌だとは思えなかった。


私は寝間着のままバタバタと走り、目覚めているわけのない時間なのに、成の寝る部屋のドアを乱暴に開く。


「ん……え、みり」


ドアの開く音に眠気眼で起き上がる成に、私は大きな声を出す。


「わ、わた、私……っ!決め、ました。ルイが望む事だから」


その言葉に、一気に覚醒した成は、少し悲しそうに微笑みながら、唇を震わせる。


「……そっか。ルイは、幸せそうにお願いしていた?」


「相変わらず泣き虫でした。……けれど、私に触れずに泣いていて、幸せそうな、穏やかな声でした」


私の答えにまた「そっか」と悲しそうに相槌を打った成は、私の足りない言葉だけで夢を見た事、そして、私が揺るがない決断をしたのだと察したようだ。


「俺、今から燭に電話するわ。多分あいつなら起きてくれそうだし、里佳子も起こすだろ。笑里はおじさんのところに」


「分かりました」


まだ、殆どの人間が寝ている時間。始発電車すら動かない、早朝とも夜中とも取れない非常識な時間でも、私達は行動を急いだ。


もしかしたら、成はこの瞬間を予想していたのかもしれない。ルイが私に記憶を流して眠りに就いたその時に忘れ形見を残すだろう、と。
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