【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
私は父を、成は燭を、その燭が里佳子をそれぞれ起こし、二人は始発でうちまで来た頃にはルイの涙色の空は白い光に包まれていた。


「笑里、夢、見たんだってな?」


「はい。おそらく、ルイは自分が命が尽きた後の決断に私達が悩むと見越して、私に遺してくれたのでしょう。……やっと聞けた。ルイが望む事を」


事の他、心は穏やかだった。失った悲しみよりも、彼の声が聞けた事と涙の温もりに触れられた事、それから、背中だったけれど彼に会えた事が私を優しい気持ちにしてくれている。


「ルイは何て言っていたんだい?」


そんな私に触発されて、私達の間に流れる空気も張り詰めていない。燭の一定の低音が、その空気に緩やかな振動を齎す。


微笑みが零れた。悲しくても涙は零れないのにこんな時に、不思議と満たされて頬が緩む。


「自分は唯一の存在だったかと問われました。機械じゃなくて、唯一、ルイという生命体だったかと問われたと、私は認識しました」


ルイの望んだ決断を言えば、本当の意味でルイは眠りに就く。もう目覚める事は無い、長い眠りではなく、永い眠りに。


どんなに悲しくても、愛しくても、名残惜しくても、ルイはそれを望んでいる。ルイは、唯一無二の存在である事を望んだのだ。
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