【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
美樹にも父から連絡が行き、その美樹がどんな手段を使ったのかは分からないけれど、学校の第二体育館を丸々貸し切り、欠席扱いの筈の私達は学校にいた。
体育館の真ん中にはいつ用意したのか、ルイの外見だった美しい身体を横たえた棺があり、私達は、黙って彼の眠る棺に白い薔薇を敷き詰める。何本も、何本も。
「何だか、キリスト教のお葬式みたいだ。死は悲しみじゃない、神様の使いになる喜びの一歩だという空気だ」
燭が白い薔薇に包まれた彼の手に触れながら、少しだけ寂しそうに囁いた。
このルイを支えていた高性能な身体は、実際は神様の元ではなく私達が知りようもない大人達の渦の中に行くのだけれど、ルイの魂までもは大人達には渡さない。私の、私達の心の中で守って行く。
「お前達、片岡さんから預かってる物があるから、手を止めてくれないか?」
花を敷き詰めて別れを惜しんでいた私達に、いつもより少しだけ気力の篭ったた美樹の声がかかった。私達はその美樹の滅多に聞けないような声に、一斉に顔を上げる。
美樹は、プロジェクターをずっと触り、ノートPCで何か操作していたようだが、プロジェクターの電源を入れて体育館のステージを照らし、持ち出したパイプ椅子に腰を下ろす。