【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「アカリ……ねぇアカリ。キミの存在を言葉にするとしたら、一番理解し合える親友だったかな。穏やかで、物静かで、一緒にいるだけで幸福な気がする、ボクの一番の友人」


今度は崩れ落ちた里佳子の肩を抱き締めた燭に降り注ぐ、ルイの想い達。


「思慮深くて、たまにとても『良い性格』になるキミといる時間は退屈しなかった。穏やかだった。キミは人を傷付けない方法を、ボクに教えてくれていた」


言葉は武器じゃないと言った燭の優しい低音を思い出す。あの言葉は、きっとルイにとってとても大切な言葉だったのだろう。心が日に日に育つルイにとって、他人を想うという部分の感情の基盤になったのだろう。


「でも、キミは自分を傷付ける。いつまでもその癖が治らない。リカコと正反対過ぎて、キミがいつか壊れてしまうんじゃないかと、今も心配でならないよ」


一番の親友だという燭をもう心配出来ないから、その分、ルイは最後に言葉を選び、彼が彼を傷付ける事が減るように、言葉で包む。


「アカリ、楽しんで。自分も人も平等に傷付かない世界を望んで、思い描いて、これから先の人生を。そして、少々突っ走り気味の一番愛する人を、キミの言葉で助けながら。……ボクにはもう、それは望んでも出来ないから」


喜怒哀楽の『楽』を『楽しむ事』『望む事』だと教えてくれた燭へルイが残したのは、親友のこれからの未来が明るい未来である事を渇望した、優しい想い。
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