【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
そんなルイに、ずっと気丈に里佳子を支えていた燭の手が、止まらぬ涙を隠すように顔に被さる。


「ルイ、俺も君を初めて出来た親友だと心から思うよ。愛する人と離れる辛さまで、君とは共有している気がする。でも、俺は生きているから、だから、その辛さを、後悔を繰り返さない。自分を傷付けないよ……」


ルイの言う通り思慮深くて、誰よりも穏やかな燭が、しゃくりあげるように声を上げる。親友を失った痛みを叫びながら。


「もう、リカちゃんを手放さない。約束する。俺は俺が傷付かないで人を守れる人になる。ルイが出来なかった分も、愛する人との未来を楽しむよ」


彼の一番の良いところで、だけども危険な部分だった優しさのナイフは、ルイが手の届かない世界に持ち出してくれたのかな。


これからの時間を傷付かぬように生きると約束した燭の答えが聞こえているように小さく頷いたルイは、大きく深呼吸して再びその小さな形の良い唇を動かす。
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