【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「ってルイ!?何でお前まで泣いてるんだよぉ」


そして、異変に気付いたのはやはり嶋山成で。


「だって、ナルの泣き顔があまりにも汚くて哀れだったから」


「ひでぇー!ルイは泣いてもルイだぁ!」


クラスメイトのいわゆるイケメンキャラが二人して泣いているこの状況は異常な事なのに、この教室はやけに温かなムードに包まれている。


嫌だな……心地良いせいで、居心地は凄く悪い。


「おっす……って、何だ?この状況」


そんな時に少し遅くに教室にやって来た御堂里佳子は、この雰囲気に思いっきり顔をしかめた。


「おはよー里佳子!あのねぇ」


そんな御堂里佳子を取り巻きの一人が引っ張って、そして事情をコソコソと話し始めている。


コソコソとしているのは、多分、最終的に私の悪口を話す為なのだろう。


この居心地の悪い感じも、ルイの涙も、もう忘れてしまいたい。


私はルイからぱっと離れて自分の席に向かい、鞄に入れていた音楽プレイヤーとイヤフォンを取り出した。


「あのさぁ、前から思ってたから言うけど、アタシに片岡の文句言うなよ。気に食わねぇなら本人に言えば?」


なのに、なかなか私は日常を取り戻せない。


御堂里佳子の大きな声がはっきり聞こえた。それぞれ日常に戻りつつあった教室だったが、クラスメイトの数人が気付くくらい大きな通る声。
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