【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
情愛カタルシス
修学旅行まで残り三日。
最終打ち合わせの話し合いに、私と楠本燭はジャンケンに負けて行く事になった。
「面倒だけどまぁ……あの二人が行くより良いか。大事なとこ聞き逃しそうだもんね」
打ち合わせ内容の確認のプリントを読みながら渡り廊下を歩き、楠本燭が呟いた。
「嶋山もリカ……御堂さんも、落ち着き無いから」
「別に、気にしないで大丈夫ですよ。君との事は里佳子に聞きましたし」
事情を聞いてしまうと、実は楠本燭が無理して他人のふりをしていることはかなり見えてしまうもので。
あの日から実行委員で都度一緒になる時も、事情を聞いてしまったが為に、楠本燭の行動が目についてしまっていた。
「いつの間に片岡さんとあの子が仲良くなってるとは思っていたけど、そんな話まで聞いてたんだね」
「仲良くというか、まぁ、成り行きで」
仲良く、見えているのか。それはそうか。滅多に人を名前で呼ばないらしい彼女が私を名前で呼ぶようになっているし、逆に私も彼女の希望で名前呼びになった。敬語はやめろと言われたが、多分それは上手くいかないだろう。
「リカちゃんがめちゃくちゃ人を信用しているところを見るのは久しぶりだ……」
何て穏やかで、幸せそうな顔をするんだ。この人は、本当に彼女を想っているのだろう。