【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜



保健室のベッドに寝かされ、楠本燭は台帳に素早く記録を残すと、打ち合わせへと戻って行った。


「そういうのが人ってもんだろう……か」


楠本燭の言う事があまりにも正しくて、それが私を人ならざる者だと指摘しているようで、左の胸の、心臓よりも奥がキリキリと痛い。


今、私が痛みを感じている場所の名前は、何と呼ぶのが正しいのだろう。遠い昔に聞いた事のあるものなのか、そうでないのか。


そういった事をぐるぐると考えた。けれど、考えたって多分全然答えは浮かばないそれを考えるのをやめよう。不毛なだけだから、と毛布を被る。


清潔且つ馴染まない保健室のシーツは、無機質で、硬く、今の私にとても良く似ていた。


こんな事を考えるのは、多分疲れているからだろう。無機質で硬いシーツと薬の香りに包まれて、私は疲れに自然と体を委ねる。


すると、猛烈な眠りに襲われて、もう、何も考える気力さえ無くなってしまった。
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