【完】Ｒ・Ｕ・Ｉ〜キミに、ひと雫を〜

さ迷う意識の中、触れた記憶の無い温もりが近くにあるような気がした。


今更、誰かの温もりも心地よいと思ってはいけない。そんな資格は無いのに、この温もりは慈愛に満ちているような、そんな温もり。


どこに降り注いでいるのだろう。隠したい。温もりの降り注ぐそこを隠せば、私は暗闇にいる事が出来るのに。


温もりの在処を探ると、それは、額から体中に浸透しているようだった。


隠そうとそっと手を額に持っていくと、温もりは、止まるどころかもっと温かく、そして、触れる事の出来るものなのだと気付いた。


大きくて、柔らかな皮と肉のような物に包まれた、ゴツゴツとしたこれは、これは……。


瞼を開き、夢から現実へ覚醒すると、私は額に手を宛てたポーズをしていた。


そして、その手と額の間には、温もりを持つゴツゴツしたもの……多分、人の掌が挟まっている。


そっと瞳を動かすと、その主は唇を不思議なくらいに震わせて、差し込む夕日なんて屁でもない程に、顔を真っ赤にしてついでに目も泳がせている。