【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「う……あ、ご、めん。なんか、片岡寝苦しそうだったから、つい」


「嶋山君」


どうやら、うなされていたらしい私を気遣って、頭を撫でていたらしい嶋山成は、手を引っ込めて代わりに自分の顔をその掌で隠している。


なんて温かな温度を持った人なのだろう。この温もりを私に注ぐなんて、勿体無い。


「何故、嶋山君がここにいるんですか?」


「いや、楠本と片岡が話し合いに代表で行ったろ?だから、ルイと教室で待ってたんだ」


せっかくじゃんけで勝ったのに、どうして待つ必要があるのだろう。里佳子なんか喜んで取り巻きと帰って行ったのに。


「片岡の様子を楠本から聞いて、びっくりして急いで来ちゃったんだ。多分ルイが今、親御さんに連絡して荷物持って来てくれるよ」


嶋山成の笑顔は直視出来ない。太陽みたいに眩しくて、私はそちらを向くと焦がされてしまいそう。


「すみません、ご迷惑おかけして」


「あのねー片岡、習わなかった?こういう時は心配してくれてありがとう、でしょ?」


その眩しさは止まらない。さっきは恥ずかしそうに引っ込めた掌を、今度は堂々と私の頭に乗せて優しく動かす嶋山成。


お願い、私を照らさないで。左の胸の奥の方から焦がされて、汚れた部分だけが残ってしまうから。
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