【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「片岡ルイです。よろしく」


その鳥が歌うようなクリアなハイトーンボイスは、顔に浮かぶ笑みとは裏腹に無機質で、感情が備わっているようには到底思えなかった。


突然現れた美しい転校生の彼の自己紹介に、動きを止めていたクラスメイト達は今度は一斉に私を見る。


クラスメイトに普段から異質な存在として排除されている私が注目を浴びるのは、彼の、『片岡ルイ』の苗字と私、片岡笑里(かたおかえみり)の苗字が一緒だからだろう。


関係の無い事を示す為に無言で首を振れば、クラスメイト達は途端に私への興味を無くして転校生の彼へと視線を戻す。


「いや、多分皆の思った事は間違っていないと思うけど。彼女、エミリとボクは家族のようなもの」


やはり無機質なようにしか感じられないその声で言い放った彼の言葉を皮切りに、静かだった教室は朝以上に騒ぎ出す。


驚く、という感情は失った世界にいる私には無いけれど、彼の言葉の意味は分からないから、疑問は湧くばかり。


私には家族なんてもう……あの人しかいないのに。
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