【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
嶋山成は、何故こんなにも人の為に心を削る事が出来るのだろうか。


……そうか。これもきっと、感情を持っているから。私には無くなったから、忘れてしまったもの。


「私には、どちらでも良い事です。ただ、あの二人にとっては、今のままじゃない方が良いのでしょう。感情が、あるのだから」


これ以上人の事を考えたくはない。何も考えず機械的に修学旅行のプログラムをこなしたい、ただ、それだけ。


嶋山成を置いて整列を始めている他の生徒に合流しようと歩き出す。


「まるで、自分には感情が無いみたいな事言うなよ」


なのに、私の足をそうやって止めるんだ。この、別の世界に生きる拾う神は。


「みたいな、ではなく、そうですよ。私は、もう何年も前にそれを捨てました」


「違う。片岡は捨ててない。心の奥に、厳重な蓋をしているだけだ。……俺は、このままになんてさせないよ」


真剣に呟いた嶋山成の顔は、昨日見た美樹の顔に似ている気がする。


ああ嫌だ。この顔は、この目は、この含んだような言葉は、全部私の汚れを太陽の元に晒すみたい。
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