【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「うわ……何、どうしろって言うの」


そっと折り畳まれた体を押してみた。


『それ』が人では無い事も、誰が造り上げた物なのかも頭の片隅では処理が出来ていたし、混乱してと言うより、確認の為の行動だった。



温かい。触れた肩は本物の人間のように体温があり、白いながらも血が通っているような感触までもある。


けれど、背中から伸びる管がそうではない事を事実として私に突きつけているようだ。


私に押された事により持ち上がった顔は、灰色掛かった茶色の、色素の薄い睫毛が多く長くびっしりと生えた瞼がしっかりと閉じられた美少年。


間違いない。『それ』はついさっきまで学校で顔を付き合わせていた、至極美しい転校生『片岡ルイ』そのものだ。


私の次の思考が動き出す前に、閉じられていた瞼が機械的に動き、カメラの起動のような微かな機械音と共に瞳が生を灯す。


「何だ、キミか」


起動した第一声は、あまりにも感情の起伏の無い、そんな綺麗なハイトーンボイス。
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