【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
結局卑しい私は、考えているだけでそうは出来なくて。


旅館の外、早くもない足をからませながら逃れた私は、暗い方暗い方へと走って行く。


やはり、ここのところの私は温かな世界に身を置きすぎていたんだ。


そんなつもりが私に無かったとしても、胸の奥のどこかで、時間と共に自分の罪を風化させようとしていた。


許されない。許されるわけがない。どこまでも甘い自分に、本当に嫌気がさす。


こんなに走ることは滅多に無いから、息が上がって足がもつれる。


「は、はぁ……はっ!」


だから、注意力は散漫していて、私は自分が大変なところに足を踏み込んでいたのだと気付くのが遅くなった。


足を取られ、体中痛みを伴いながら、やる気のない美樹の声を思い出す。


『旅館のあっちには崖があるから立ち入らないようにー……』


あの無気力教師め。そういうことはもっとしっかり、危機感のあるように説明してよ。なんて、悪態をつくも後の祭り。


まるで底の無い暗闇に引き摺られる感覚は、私に少しの安心感すら与えてくれる。


このまま、誰にも気付かれることなく消えることが出来たらいいのに。
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