【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
どうやら崖と言っても絶壁ではなく、わりかし緩やか、且つ低い物だったらしい。
滑り落ちた私は多くの擦り傷と左足首の捻挫以外に大きな怪我も無く、その暗闇の底へと落ちたようだ。
とはいえ、この足であの高さを登る事は運動能力が平均値の私には出来ないだろうし、突発的な行動だったから連絡手段も無い。スマートフォンは客室で充電されたままだ。
そのうち誰かが私が戻って来ないのに気付いて探しに来るのを待つ他方法は無いと早々に諦めて、私は膝を抱えて座り込んだ。
この状況は、少し前に見た夢に似ている。
暗闇の中ぼろぼろの姿で膝を抱える私の。でも、あの夢と決定的に違うのは、傍らには小さなあのロボットはいないということ。
あのロボットは、どこまでも卑しい私の願望だったのかもしれない。
一人で良いなんて言っておきながら、本当は一人でいたら罪で潰れてしまいそうな私の、誰かに寄り添って欲しいという、そんな……。