もう君がいない


「朝、苦手でしょ?」

「ああ、確かに今でもちょっと苦手だけど、でも昔ほどじゃない。」

「そっか。なら、いいんだけど。」

「ん。じゃあ、最後な。」


最後の線香花火を手渡す蓮。


やっぱり、嘘をついてるようには見えない。

でも、じゃあ本当に一番に教室に入りたいだけ?

特に理由もなく?


まだ少しだけ納得できないけど、でも信じるしかない。

蓮の言葉を信じて、私のせいじゃなかったんだと、安心すればいいんだ。



「あ〜、だめだめ!落ちないで〜!」

「はい、また俺の勝ち。」


最後の勝負。

またもや私の負け。


なんだろ?

今日は、ついてない日なのかな?


「じゃあ、最後の質問だな。」

「はいはい、何でもどうぞ。」


次の瞬間、蓮の口から飛び出してきた最後の質問は、今までで一番驚くものだった。



「俺、帰って来ない方が良かった?」


今までより少し小さく、消え入りそうな蓮の声が、私の耳に残った。

その蓮のセリフが、一瞬のうちに、頭の中をグルグルとかけまわった。


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