もう君がいない
「さっきから何考えてんの?」
「えっ?」
「ぼーっとしてるから。」
「えっ、そう?そんなことないよ。」
電車に乗ったのはいいけど、雨だからかすごく人が多くて、満員でぎゅうぎゅうの車内。
「ぼーっとしてたら危ね、、」
「わっ!」
蓮が言いかけたとき、電車が揺れて、私は足元がグラついて、後ろの人に倒れかかりそうになった。
その瞬間、ぐいっと引かれた腕。
「ほらな。こうなると思った。」
「ご、ごめん。ありがと。」
蓮が腕を引いてくれたおかげで、私は倒れかからずに済んだ。
でも、、
いつまで経っても、蓮は私の腕を離さない。
「蓮?もう大丈夫だよ?」
私は、蓮の顔を見上げてそう言ったけど、
「茉菜は危なっかしいから、電車降りるまでは掴んどく。」
蓮はそう言って、電車から降りるまで、本当に私の腕を離さなかった。
もちろん私の心は、またいつものごとく、うるさく跳ね続けるのだった。