もう君がいない
「蓮。」
立ち止まって、背中に向かって名前を呼んだ。
振り返った蓮。
目が合う。
「ん?どうした?」
いつもの優しい声。
少し右に首をかしげて、私の次の言葉を待っている蓮。
もう、言うしかない。
「あ、あのね?その、、」
「ん?」
「だから、その、、」
「何だよ。何か変だぞ?茉菜。」
言うと心を決めたのに、肝心の言葉が言えない。
心臓がばくばくいってる。
それを落ちつけようと、私は深く深呼吸をした。
空を見上げると、今にも雨が降り出しそうなくらい、どんよりと曇っていた。