もう君がいない
「で?茉菜の話は?」
「ううん!何でもないの。」
「え?でも話があるって、」
「そんなに大した話じゃなくて、なんか忘れちゃった。」
不思議そうな顔をする光貴に、首をふって笑ってみせる私。
私、いつからこんな嘘をつくようになった?
平気で嘘ばっかついてる。
「本当に?」
「うん。また思い出したら言うね。」
「わかった。」
それからは、練習の調子はどうなの〜?なんて聞きながら歩いた。
サッカーの話をする時が、光貴の目が一番輝くんだ。
そんな光貴を見ながら、
うん、やっぱり間違ってない。
光貴のサッカーの邪魔だけはしたくない。
試合が終わったら、光貴が落ち着いたら、その時言おう。
そう自分に言い聞かせた。
自分にさえも、嘘をついてごまかす。
そんな自分に嫌気がさす。
でも、そんな自分を変える力は、まだ今の私にはない。