もう君がいない
「お母さ〜ん!今年も浴衣着るから、着付けお願いします!」
私は慌てて1階へ降りると、せっせと掃除してるお母さんに声をかける。
「あらあら、じゃあまたおばあちゃんに頼んでおかなきゃね〜。今年も光貴君と行くの?去年とは違う浴衣にしなきゃね〜。」
ズキン、、
心が痛んだ。
毎年光貴と花火大会に行っていた。
私は毎年お母さんに浴衣を着付けてもらって、
でも、毎年同じ浴衣は嫌だからって、違うものを着るようにしてた。
うちはおばあちゃんが着物が大好きで、素敵な浴衣もたくさん持ってたから、
毎年おばあちゃんに借りてたんだ。
「ううん、今年は蓮と行くんだ。花火。」
「あら、そうなの?」
お母さんは、少し驚いた顔をしたけど、
「じゃあ、蓮君の好みを聞いておかなきゃね〜」
って、優しく笑ってくれた。