もう君がいない
「私、あの紺色の浴衣がいいんだ〜!」
「ああ、あの大人っぽい綺麗な柄の?」
「うん!」
「わかったわ。おばあちゃんに連絡しておく。」
蓮は覚えてないかもしれない。
私達がまだ小学生の頃、
蓮と行った、最後の花火大会。
私と蓮と、お母さんとおばさんと、4人で行った花火大会。
お母さんがおばあちゃんから借りて着てた、紺色の浴衣。
百合の花が綺麗な、お上品な柄。
その浴衣を着たお母さんを見て、
「おばさん、その浴衣の花、綺麗だね。」
普段そんなことを言わない蓮が、ふとそう言ったんだ。
その時私は、お母さんにちょっと嫉妬しちゃったっけ、、
私も大きくなったら、絶対この浴衣を着て、蓮に褒めてもらうんだ!
って、そう心に決めてたんだ。