もう君がいない
「おい、茉菜?おーい、」
「えっ?」
光貴が私の目の前で、手をヒラヒラと動かす。
「話聞いてた?」
「あ、ごめん。ぼーっとしちゃってて、」
「だと思った。最近なんかぼーっとしてること多いな?本当になんもない?」
「ごめんね。本当に大丈夫だよ!ちょっと寝不足なのかも〜」
「そう?あんま無理すんなよ?」
最近ほんとに多い。
光貴の前でぼーっと考え事しちゃって、光貴に心配されてばっかり。
「もうそろそろ帰るだろ?」
「えっ、もうそんな時間?」
時計を見れば6時を過ぎていて、窓の外は少し暗くなっていた。
「本当だ〜、そろそろ帰らなきゃ。また明日くるからね。」
私はそう言いながら立ち上がろうとしたとき、
「へっ、?」
光貴に腕を掴まれて、グイッと引っ張られた。
気づけば、光貴と唇が重なっていた。
「気をつけて帰れよ。」
「う、うん、、」
光貴が私の腕を離した途端、
「じゃあまた明日ね!」
私はそれだけ言って、慌てて病室を飛び出した。