もう君がいない
大好きなはずのおばさんの手料理、私はほとんど食べられなかった。
みんなが私を心配してくれた。
食べなきゃ。
おばさんに失礼だから。
そう思ってはいるのに、口に入れても味を感じないし、飲み込むのも辛かった。
親達はお酒を飲みながら、難しい話をし始めた。
「茉菜、俺の部屋に行こう。」
蓮に腕を引かれ、私達は二階の蓮の部屋へと上がった。
蓮のベットに、ちょこんと並んで座る。
「茉菜、怒ってる?俺がアメリカに行くから。」
「ううん、怒ってないよ。」
怒ってなんかなかった。
ただ、もし怒るとすれば、聞き分けの悪い自分に対してだった。
「ごめんね。今まで茉菜とずっと一緒にいたのに、茉菜を一人ぼっちにしちゃう。」
「ううん、病気を治すためだもん。蓮は悪くないよ。」
誰も、悪くなんかない。
誰も、謝る必要なんてない。