もう君がいない
「さんきゅ。」
それだけ言うと、蓮は静かに目を閉じた。
しばらくすると、スースーと、規則正しい寝息が聞こえてきた。
でも、、
蓮が眠ってからも、、
私は、しばらくその手を離せなかった。
ううん、離したくなかった。
「うっ、、蓮、蓮、、」
蓮が起きてしまわないよう、
私は、蓮の綺麗な寝顔に向かって、小さな声で何度も蓮の名前を呼んだ。
そして、、
「蓮、、好きだよ、、」
決して口にすることのできなかったその言葉を、
そっと呟いた。
こんなにすぐ近くにいるのに、、
目の前にいるのに、、
これ以上は、絶対に近づけなくて、、
絶対に、踏み出してはいけなくて、、
繋がった、蓮の手と私の手。
蓮の温もりは、そっと私の心を包んでくれるようで、、
何もかも投げ捨てて、
全てを忘れて、
このまま蓮の側にいたい。
何度もそう思った。