もう君がいない
「いや、別に。」
つられて光貴までペコってしてて、何だかその光景がちょっとおもしろかった。
「お〜い、光貴〜。行くぞ〜。」
「おう。」
友達らしき人に呼ばれて、光貴はじゃあって言って、すぐに校舎の方に消えていった。
「ふーん、あの人光貴って言うんだ〜。かっこよかったね!」
「そう?」
「でた!茉菜は蓮くんにしか興味ないんだから〜。あ、そうだ!私達同じクラスだったよ!2組だって。」
「本当?やった〜!行こ行こ!」
この時の私は、まだ蓮のことしか頭になくて、美雪の言う通り、他の男子に興味がなかった。
アメリカに行ったばかりの、蓮のことを心配してばかりだったから。
「あっ、茉菜あれ!さっきの人だよ!」
美雪と2組の教室に向かうと、入り口でさっきの光貴と友達らしき人が立って話をしていた。
「あ、さっきの。もしかして、2組なの?」
光貴が気づいてくれて、声をかけてくれた。
「うん。」
「俺も2組なんだ。宮下光貴、よろしくな。」
「あ、私は櫻井茉菜。よろしく。」
さっきは突然のことでびっくりしてて、ちゃんと光貴の顔を見たのは、この時が初めてだった。
爽やかな笑顔で微笑む光貴は、美雪が言った通り、かっこいい人だった。
大人っぽくも、かわいらしくもあるような整った顔立ち。
スポーツをしてるのか、健康的に焼けた肌。
他の男子よりも、少し高い身長。
確かに、モテそうな人だなぁって、他人事みたいにそう思った。