もう君がいない


「この時期になると、いつも茉菜がそう言ってたから。そろそろかなって、」

「ふふふ。さすがだね、蓮は。」

「別に。茉菜がそんだけ何回も言ってたから、毎年毎年。」



この時期には、冬の匂いがする。


空気の匂いというか、なんというか、、

冬独特の、冷たく張り詰めた空気。



私は、夏生まれなのに〜って親に言われるけど、冬が好きなんだ。


寒いのは確かに辛いけど、、

でもやっぱり、春よりも夏よりも秋よりも、


冬が一番好きな季節。



「ねぇ、蓮?」

「ん?」

「私、今日ずっと考えてたんだけど、」


ずっと、ずっと考えた。


今日の朝、蓮と話した時の蓮の目、、

あの寂しそうな蓮を見てから、私は授業どころじゃなくって、


ぼーっと外を眺めながら、必死に考えてたんだ。


蓮に、何て言えばいいんだろうって、、

どうすれば、蓮に寂しい思いをさせずにいれるんだろうって、、


ただ一緒に帰りたかったっていうのも、もちろんなんだけど、、


でも、考えて考えて、

蓮に伝えたいことがあったから、一緒に帰ろうって誘ったんだ。


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