もう君がいない
「今日、朝から蓮が言ってたでしょ?蓮だけ、共有できない思い出がある、それが寂しいって。」
「ん。」
すごく悲しかった。
すごく切なかった。
何も考えずに言った言葉で、蓮にあんなに寂しい目をさせてしまった。
なのに、そんな蓮に、
何も言ってあげられない自分が、悔しかった。
「私もすごく寂しくなったの。蓮だけじゃない、私だってそうだなって。」
「どういうこと?」
考えて気づいた。
今まで考えもしなかったけど、蓮に言われて気づいたんだ。
「蓮がいない私や美雪の時間が流れたように、蓮にも、私達がいない時間が流れたんだなって。その蓮の思い出に、私はいない。」
「茉菜、」
「アメリカにいた蓮の側には、私はいなかった。その頃の蓮の思い出や気持ちを、私は共有できなかった。」
蓮だけじゃないんだ。
相手には自分の知らない時間が流れてて、
自分のいない思い出がたくさんあって、
それを、一緒に共有して過ごすことができなかった。
蓮の4年間、、
私の4年間、、
お互いに知らない時間が、そこにはある。