もう君がいない
「蓮、、覚えてたの?」
「ん。あの時、おばさんが着てた浴衣だろ?」
その蓮の言葉で、ぶわっと溢れそうになる涙を必死にこらえる。
「茉菜も、覚えてたんだな。」
「当たり前じゃん、」
忘れるわけないよ。
今年の夏だって、、
蓮と行くはずだった花火大会、、
あの浴衣を着て行こうとしたんだもん。
「あの浴衣、まだある?」
「あるよ。」
「そっか。」
「ほんとはね、?」
そこまで言って、一瞬考えた。
あの夜のこと、蒸し返すみたいじゃないかと、、
いま、掘り返していいものかと、、
でも、
「なに?どした?」
って、蓮が目をクリッとさせて聞くから、、
「ほんとはね、着るつもりだったの。」
「ん?」
「花火大会、、蓮と行く約束してた今年の花火大会、あの浴衣を着てこうと思って、準備してたんだ。」
いつしか隣を歩いていた蓮に、そっと見上げるように目を向けた。