もう君がいない
蓮は、少し驚いたような顔をして、
そのあと、
寂しそうに、でも優しい顔で笑った。
「そんなこと考えてたなんて知らなかった。行きたかったな。あの浴衣を着た茉菜と。」
蓮がそう思ってくれるだけで嬉しかった。
” 行きたかった。”
っていう、蓮の気持ちも初めて聞けた。
「行こうよ、来年。」
「ん?」
「来年こそ、一緒に花火大会行こ?私、絶対あの浴衣着て行くから。」
今年は無理だったけど、来年がある。
来年こそは、絶対に、、
絶対にあの浴衣を着て、蓮の隣を歩きたい。
蓮の隣で、花火が見たい。
素直にそう思った。
素直に伝えた。
でも、その私の言葉を聞いた蓮は、
また、寂しそうに笑うんだ、、。
そして、私から目をそらし、遠く前を見て、
「そうだな。」
と、ぽつりとつぶやいた。
その寂しそうな横顔が、私を不安にする。
蓮、、
蓮は、どこを見ているの?
その目の先には、何が映っているの?
私がそれを知るのは、もう少し後のこと。