もう君がいない
私の声に振り向くと、
「やっぱり来た。」
そう言って、蓮は笑った。
「やっぱりって、私が来るってわかってたの?」
私は、そう尋ねながら蓮の隣に腰を下ろす。
「なんとなく、そんな気がした。」
「私もなんとなく、蓮がここにいる気がして。」
「え?」
「寝付けなくて、キャンプの時のこと思い出したの。それで、もしかしたら蓮も、って。」
「一緒だな。」
「蓮も?」
「ああ。ここに座ってたら、あの時みたいに茉菜が来るかもって思った。」
同じこと考えてたんだね、私達。
同じことを思い出してたんだ。
そんな風に、2人しか知らない思い出があって、
それを2人同じように思い出して、
なんだか、心がほっこりする。
「綺麗だな。」
「だね。」
見上げた空には、たくさんの星があった。
「京都でこれだけ綺麗に見えるんだから、茉菜が言ってた沖縄の星空は、もっと綺麗なんだろうな。」
「うん。もっともっと綺麗だよ。」
「そっか。」
蓮はそれ以上何も言わず、静かに星を見ていた。
しばらくの沈黙が、私達の間に流れた。