もう君がいない
俺は、茉菜に頼んだ。
公貴には、俺から伝えさせてほしいと。
きちんと話したかったんだ。
ちゃんと、自分で伝えたかった。
それに、公貴と一度、2人でじっくり話してみたいとも思っていたから。
茉菜は、少し考えた後、わかったと言ってくれた。
あれからまた少し話をして、俺達はそれぞれ部屋へと戻った。
俺が部屋に戻ったとき、公貴は1人起きていて、
窓辺に座って外を見ていたが、俺の方へゆっくりと振り返った。
「起きてたのか。」
「ああ、眠れなくて。」
「そっか。あのさ、ちょっと話したいんだけど、いいか?」
俺がそう聞くと、公貴は、
「ん。」
と、短い返事とともに、すでに俺の言いたいことがわかっているかのような、
すべてをさとっているような、そんな優しい顔をした。
俺達は部屋を出て、静まり返ったロビーに二人で降りた。
自販機でホットコーヒーを買い、先に座っていた公貴に手渡す。
「さんきゅ。」
すぐに缶を開け、一口飲んだ公貴は、はあっと溜め息にも似た息を吐いた。