もう君がいない
その日、私におめでとうと言ってくれたのは、美雪だけではなかった。
「蓮から聞いた。おめでとう、茉菜。」
「公貴、」
大阪に移動するバスに乗り込むため、旅館の外でみんなががやがやしている中、そっと話しかけてくれた公貴。
「ったく、茉菜も蓮も、じれったくて見てられなかったよ。」
そんなことを言って、笑ってくれる。
「ありがとう。」
「ん。俺も。」
「え?」
「なんかさ、昨日蓮から話聞いて、俺もすっきりしたんだ。フッて、軽くなった気がした。これで、俺も前に進めるよ。」
涙がこぼれそうだった。
目の前にいる公貴の顔が、涙で少しにじんだ。
「泣いたら怒るぞ。」
「うん、ごめん。」
「まーた謝る。」
「あ、、」
ここまできたら病気だな、って、、
そう言って公貴がまた笑うから、
私もつられて笑っちゃう。
「茉菜は、もっともっと幸せになれ。俺が負けじと頑張れるように。」
「ありがと。」
「ん。」
「本当にありがとう。」
何度伝えても、伝えきれるはずがない。
公貴への、感謝の気持ち。