もう君がいない
「あらやだ。まだ着替えてもないの?」
ソファーに座ってテレビを見ていた私に、洗濯物を干し終えてリビングに戻ってきたお母さんが小言を言う。
「だってまだ時間あるし。」
「やだわぁー。早めに準備終わっちゃって、ソワソワしてるくらいが普通よ。」
「何それ、」
「そのくらいの可愛さもないなんて~。」
そう言いながら、今度は掃除を始めようと、掃除機を取ってきたお母さん。
「ほらほら、邪魔になるから、部屋に行って準備始めなさいよ~。」
「あーもう、わかったよ!」
そうしてリビングから追い出された私は、
しぶしぶ自分の部屋に戻り、言われたとおりに準備を始める。
せっかく時間もあるし、いつもより念入りに化粧しちゃおーかな。
私の親はもちろん、蓮の親も、
もうすでに、私たちが付き合っていることも知っているし、
今日私たちがデートに行くことも知っている。
修学旅行から帰った日に、
蓮が自宅にお土産を買わないことを見越して、買っておいたお土産を渡しに行ったんだけど、
「茉菜ちゃんみたいに、優しくて気の利く可愛い子がお嫁さんに来てくれるのが夢なの~。」
って、おばさんがいつもみたいに冗談で言ってくれた一言に、
「嫁はまだ早いな、」
なーんて蓮が言うもんだから、