もう君がいない


「じゃあ、今度江の島に行くときは、蓮のおごりで。」

そんなひどいことを言ってみたけど、私が口を開いただけで、

パアッと明るくなった蓮の顔。



「喜んで!」

「冗談だって。」

「いや、ぜひおごらせてください!」

「もう、何そのキャラ。」


あまりのおかしさに、ついつい笑ってしまう。


「そのときは、なんなりとお申し付けください!」

「わかったから、その話し方やめて。」

「はい。」


自分でやっておきながら、隣で笑いだす蓮。


そんな蓮もかわいいなぁ、なんて思ってしまう私は、

きっとどんなことをされても、何度だって蓮を許してしまうだろう。




「で?これどこに向かってるの?」

「んー、まだ秘密。」

「なんでよー、教えてよー。」

「着いてからのお楽しみ。」

「何それー?すごい気になる。」


そう言って、また何度か聞いてみたけど、

本当に蓮は、行き先を教えてくれなくて、



「ヒントは?」

そう尋ねると、


「茉菜も知ってる場所。」

とだけ、教えてくれた。


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