もう君がいない
Chapter.2 〜 戸惑う針 〜
気まずい朝
始業式の次の日の朝。
突然帰ってきた蓮のことで、頭がいっぱいになっちゃって、全然眠れなかった。
はぁ、、
クマできてるし。
私は鏡に向かって、コンシーラーでクマ隠しを始める。
本当に、、帰ってきたんだよね?
蓮が、いるんだよね?
今、隣の家にいるんだよね?
いまだに信じがたい事実。
それが、私の心をかき乱す。
過去にしたつもりだった。
思い出にできたつもりだった。
なのに、蓮を見た瞬間、心が跳ねたのはなぜ?
蓮の隣を歩くとき、きゅんとしたのは気のせい?
蓮の家に行って、久々に二家族集まっての食事で、幸せだと感じたのは?
私は、ちっとも蓮のことを、過去になんかできていなかったのだろうか。
見えないフリして、フタをかぶせていただけ?
本当は、私の心の中に、まだしっかりと蓮がいたのだろうか。