もう君がいない
「このお店、、」
「どうかした?」
私は、通りかかった一軒の駄菓子屋さんだったらしき、今は開いていないお店の前で足を止めた。
「見覚えがある。」
そう言って、私が指を指したのは、
そのお店の前に並んだ、二つの木のベンチ。
と、その上に覆いかぶさる、赤と白のビニールの軒先。
「正解。」
「へ?」
「写真があった。」
蓮は、コートのポケットから携帯を出し、
アルバムの写真を撮ったものを見せてくれた。
「これって、」
そこには、今と変わらないこの軒先で、あのベンチに座る私と蓮。
私達の隣には、お母さんとおばさんもいて、4人で棒アイスのようなものを食べている。
「ここに来たのは、夏だったらしい。」
「そっか。」
確かにここにいた、私達の記録。
「よく気づいたな。」
「うん、なんとなくだったけどね。」
「はっきりと覚えてなくても、頭のどっかに、ちゃんとあるんだろうな。」
「そうだね。」
蓮は、再び携帯をしまうと、
もう少しだから、とだけ言って、また歩き始めた。