もう君がいない
「思い出した?」
後ろから、顔を覗いてくる蓮。
「思い、出した、。」
私の頭の中で、一気に溢れてきた記憶。
目の前に広がる、
すっかりオレンジ色に染まった空。
夕日の光が反射して光る海。
そして、砂浜の先に立つ、真っ白な灯台。
「登らない?」
「登りたい!」
私達は、あの日のように、
白く輝く灯台に向かって足を進めた。
そこに待っているであろう、
あの景色を目指して、、。
「きれ~!」
「最高だな。」
「あの時と同じだね。」
「ああ、ちっとも変わってない。」
灯台のてっぺんから見えた景色。
あの頃と変わらず、美しい景色がそこにあった。
この景色が見たいと、おばさんが言い出した。
海水浴に来ていた私達は、
夕日の綺麗な夕方に、みんなでこの灯台に登ったんだ。
あの時も、こうして蓮と手をつないで、
初めて見る景色のあまりの美しさに、息をのんだ。