もう君がいない
しばらくして、主治医の先生とおじさん、
そして、目を真っ赤にしたおばさんが出てきた。
先生は、私達にも頭を下げると、またどこかへ戻っていった。
「本当にありがとう。迷惑をかけたね。」
沈黙を破ったのは、おじさんだった。
「何を言うんだ。」
「そうよ。迷惑だなんて。」
お母さんとお父さんは立ち上がり、口々にそう言った。
「とにかく、落ち着いてよかったわ。」
「ああ。今日はもう遅いし、送っていくよ。」
「大丈夫。私が車で来たからな。」
「そうか。」
「じゃあ、私達はひとまず帰るわ。茉菜?茉菜は、」
お母さんが私に声をかけたとき、
「茉菜ちゃんは、残ってもらえないかしら?話があるの。」
今までずっと黙っていたおばさんが、口を開いた。
「それに、蓮が目が覚めたとき、きっと茉菜ちゃんにいてほしいと思うから。」
「茉菜、どう?残れる?」
私は、口を開く代わりに、
ただ、小さくうなづいた。
「ありがとう、茉菜ちゃん。」
「じゃあ、お母さんたちは、先に帰るね。」
「茉菜、体冷やすなよ。」
そう言って、お母さんとお父さんは帰って行った。
おじさんも、二人を見送るために行ってしまった。