もう君がいない
「情けないな、」
しばらくして、落ち着いた蓮は、
私から離れると、力なく笑った。
「そんなことないよ。」
私は、そのままベットに腰かけ、そっと蓮の手を握った。
「ごめんな?ちゃんと、自分で茉菜に伝えなきゃいけなかったのに。伝える前に、こんなことになって。」
「ううん。大丈夫。」
両手で包む蓮の手は、ちゃんと温かくて、、
その体温が、私の心を落ち着かせる。
「びっくりしたよな?」
不安そうに、私の顔色をうかがう蓮。
どうすれば、蓮を安心させてあげられるのか、
私はそんなこともわからない。
そんな無力な自分が、情けない。
「聞いただろうけど、俺にはもう、時間がない。医者に言われたリミットが、もうすぐ来る。」
リミット、、
その言葉が、重くのしかかる。
「いつ、どうなってもおかしくない。昨日みたいな発作が、あと何度あるかもわからない。」
淡々と話す蓮だけど、
その声は、かすかに震えていた。
当たり前だ、、
蓮だって怖いよね?
ううん、
きっと、蓮が一番怖いに決まってる。
蓮が、一番、死の恐怖に押しつぶされそうなんだ。