もう君がいない
いつもの場所に、光貴が立っていた。
「おはよ。柴崎も一緒だったのか?」
「あ、うん。ちょうど家出るタイミングが一緒になって。」
「そっか。」
光貴は、あまり気にするそぶりも見せず、
いつものように、私の右手を握った。
「じゃあ、3人で行こう。」
そう言って歩き出す光貴。
蓮は何も言わないまま、黙って少し後ろを歩いていた。
私は、怖くて振り向けなかった。
蓮が、今どんな顔をしているのか、、
見る勇気がなかった。
胸が、、苦しかった。
光貴と手をつないで登校するのは、いつも通りのこと。
学校以外でも、デートの時もいつも手をつなぐ。
周りの人の目なんて、気にしたこともなかった。
でも、今、私は、、
手をつなぎたくないと思ってしまった。
蓮の前で、手をつながないでほしいと、、
蓮には、見られたくないと、、
そう思ってしまったんだ。