もう君がいない
「始業式の後、ホームルームでね?進路希望の調査があったの。」
全員に配布された紙。
第三希望まで、進路希望を記入するものだった。
「でもね、私なにも書けなかった。」
考えたことがないわけではない。
自分の将来について。
でも、いざ目の前にすると、
なに一つ浮かんでこなかった。
「大丈夫、、」
「え?」
蓮の、かすかに発した小さな声。
聞き逃さないように、私は蓮に耳を近づける。
「茉菜なら、きっと見つけられる。」
「蓮、、」
私が出す進路希望、蓮は出せない。
配られた瞬間、みんなが嫌がった。
”考えたくない”
そう言った子もいた。
でも、蓮は考えることさえもできない。
自分の将来を、自由に思い描くことさえできない。
「茉菜には、笑顔を届ける仕事が似合う。」
「笑顔?」
「俺は昔から、どんなに病気で苦しい日も、茉菜の笑顔に救われた。茉菜の笑顔を見たら、つられて笑っちゃうんだ。」
息苦しそうに、でも優しい顔で話してくれた蓮。
そんな蓮の言葉に、私は救われてきたんだよ?