もう君がいない
「ちょっと、みんな待って、」
お母さんの慌てた声と、
何人もの階段を上る足音が聞こえてきた。
そして、部屋のドアがノックされ、
「茉菜、入るぞ。」
公貴の声だった、、。
えっ、、ウソ、、
私がびっくりして起き上がったと同時に、部屋のドアが開いた。
公貴に美雪、里中君までが部屋に入ってきた。
心配そうに、廊下から見つめるお母さん。
ずっと締め切ったままだった部屋のカーテンと窓を、美雪が勢いよく開けた。
部屋に運び込まれた空気は、
蓮が亡くなった春の風とは、ずいぶん違うものだった。
「茉菜、」
公貴の、低く落ち着いた声。
私は、誰の顔も見れずにうつむく。
「何やってんだよ。いつまでこうしてるつもりだ?」
公貴の問いにも、何も答えない。
「茉菜ちゃん?」
心配そうに、里中君も私に声をかけた。
でも、口が開けない。