もう君がいない
想像はしてたんだ。
もしかしたら、って。
そう考えてた。
茉菜はもう、俺のことなんてなんとも思ってないかもしれない。
茉菜には、茉菜の隣には、
俺じゃない誰かがいるかもしれない、って。
でも、本当にその存在を知ったとき、
公貴の存在を目の当たりにしたとき、
やっぱり辛かった。
心がズタズタに切り裂かれるって、
こういうことを言うのかなって、そう思ったりして。
だけど、それも全部、俺がまいた種。
俺の自業自得。
あと一年しか生きられない俺なんかより、公貴の方が茉菜にはふさわしい。
そう、必死に自分に言い聞かせてた。
毎日毎日、
そうやって、自分の気持ちを押し殺してた。
だから、茉菜が俺に好きだと言ってくれたとき、
正直、一瞬迷った。
嬉しくて嬉しくてしょうがなかったけど、
本当に俺でいいのか、本当に茉菜の隣にいていいのか、
そんな考えが、頭をよぎった。
でも、考えるより先に、体が動いてた。
茉菜を、抱きしめていた。
茉菜を腕の中に感じたとき、
俺は、今まで生きてきた中で一番幸せだった。
生きてる喜びを感じたんだ。