もう君がいない
生徒が全員揃い、予定より少し早く、学年主任の先生が話を始めた。
校長先生の、いってらっしゃいの挨拶も終わり、クラスごとにバスに乗り込む。
光貴と蓮と里中君は、一番後ろに3人で座ってて、男子達がその周りに座ってた。
私は美雪と、少し離れた席に二人で座った。
キャンプ地までは、二時間ほどかかる。
私と美雪は、持ってきたお菓子を広げ、食べ始めた。
「で?その後どうなの?」
「え?何が?」
美雪って意外とせっかちな所があって、主語が無くて、話がわからないことがよくある。
「蓮君のことに決まってるじゃん。戻ってきて2週間くらいでしょ?どんな感じなのかな〜って。」
「どんな感じって、別に何もないよ。帰って来た日は、蓮の家にうちの家族と全員集まって、みんなでご飯食べたけど、それ以外は特に何も。」
「ふーん、ってそうじゃなくて!」
「え?」
私の、何のことかわからないって顔を見て、軽く溜め息をつく美雪。
「茉菜がどうかってことを聞いてるの〜!蓮君が帰ってきてから、なんか茉菜元気なかったから。何か悩んでるのかな〜って。」
さすが、美雪。
親友歴11年目だもんね。
「うん、ちょっと悩んでる。なんか、自分でもよくわかんないんだよね。」
「とにかく、話してみて?」
「うん。」
私は、蓮が帰って来てからのことを、全部ゆっくりと美雪に話した。