もう君がいない


「やっぱ茉菜は、期待を裏切らねーな。」

「どういう意味よ〜!」

「悪い悪い。ちょっと待ってて。」


そう言って蓮は釣り竿を置くと、ケタケタ笑いながら、木に引っかかった私の針を取ってきてくれた。


「私、釣りのセンスない。」

「確かにな。はははっ。」

「まだ笑ってるの〜?ひどすぎ!」

「ごめんごめん。ははっ。」


謝りながらも笑い続ける蓮に、なぜか私もつられて笑ってしまった。


楽しい。

こんなにお腹の底から笑ったの久しぶり。



「ん。ここ持って。」

「えっ、、」


笑ってたかと思ったら、蓮が急に私の後ろから竿を持たせてきた。


ちょっ、、近いよ、、

蓮も後ろから一緒に竿を持っていて、後ろから抱きしめられるような形になっていた。



どくんっ、どくんっ、、


一気にうるさくなる私の心臓。

このドキドキが、蓮にも聞こえてしまうんじゃないかってくらい、蓮がすごく近かった。


どうしよう、、

なんでこんなにうるさいの?

落ち着いてよ、私の心臓。

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