もう君がいない
「こんくらい軽く持ったら、」
「えっ、」
釣り竿を握る私の手を、上から包むように握った蓮の手。
今まで以上に、大きくはずむ私の心。
「力抜いたまんま、投げる。」
「わっ、」
蓮が私の手を握ったまま、ひょいっと釣り竿を動かすと、さっきまで全然入らなかったルアーが、ちゃぽんっと川に入った。
「わかった?」
私の顔を、後ろから覗き込むようにして、蓮は聞いた。
「わっ、わ、わかった!」
「ははっ、ほんとかよ。」
そう言いながら、何事もなかったように離れていく蓮。
置きっぱなしにしていた自分の釣り竿を手に取り、横に並ぶように立った。
だめだ、、
私の心臓はどくんどくんと、大きな音を立ててはずんだまま。
一向に落ち着かない。
しかも、私の顔、いま絶対真っ赤になってる。
さっきからほっぺたが熱い。