もう君がいない


隣の蓮を横目に見ると、川に投げ込んだルアーを見つめ、涼しげな表情をしていた。


「ん?なに?」

「な、なんでもない!」


私の視線に気づいたのか、パッと蓮がこっちを見たから、私は慌てて顔をそらす。



、、どうして?


どうして蓮は、そんな平気でいられるの?

蓮は、私のこと全然気にしてないの?


どうしてこんなことするの?

こんなことされたら、きっと女の子なら誰でもドキドキしちゃうよ?


蓮は、蓮の心は、ちっともはずまないの?

ドキドキしたりしないの?

それだけ、私のことを、女の子として見てないってことなの?



私が悶々と考え込んでいると、


「あっ、きた!」

「えっ?」


隣から蓮の声がして、それと同時に、蓮は釣り竿についてるやつをクルクル回して、釣り糸を引き寄せ始めた。


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